研究概要 |
新人看護婦の職務ストレッサー体験度は「看護ケアに関するストレッサー」と「職場の人間関係に関するストレッサー」に大別され,看護経験年数が多くなるほど「看護ケア」は減少し,「職場の人間関係」は増加していた。ストレッサーに対する体験度と負担感の相関関係は有意であったが,「看護ケア」では比較的低かった。職務ストレスに対するコーピングは,採用順に支援探求・自責内省・問題解決・回避楽観の4つが見出された。支援探求は問題解決と,自責内省は回避楽観と強い正の相関関係があり,多くのコーピングを併用しながら対処していることを示していた。また問題解決と支援探求はサポートの認知と正の相関があり、さらに上司および先輩からのサポートを高く認知する程,職務ストレッサー軽減させていた。個人の特性である自己効力感は,ストレッサーの認知やコーピング,ストレス反応に影響を与えていた。ストレス反応のうつ傾向は職務ストレッサーが多くなると強まる関係にあった。 以上より,新人看護婦の職務ストレスに対するストレス反応を軽減させるための有効な要因としては,自己効力感が高く,上司や先輩のサポートを多く認知し,「職場の人間関係」のストレッサーが少なく,自責内省コーピングをとらないことが見出された。 一方,仕事上の悩みについて出身学校の教員に対応を望む新人看護婦は,その割合は多くはないものの,職務ストレスが高く,情動中心型コーピングを多く採用するなど自ら心理的負担緩和に努めており,さらにうつ傾向が高いという特徴をもっていた。 現時点で明らかになった要因の関連性は部分的なものである。横断研究に協力頂いた全国114病院と,縦断研究の対象者118名に報告書を送付した。今後は新人看護婦の職務ストレスに関する臨床と教育の立場からのサポートシステム構築に向けて,縦断研究を含めた分析をさらに進めていく予定である。
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