研究課題
基盤研究(C)
本研究は、古典的な機械および工作機械の規定をゆるがす機械技術の近年の変化、とりわけ工作機械のNC化をめぐる問題をさしあたり日本での変化を実証的に明らかにしたものである。工作機械のNC化は、複雑な形状の加工を目的として生まれたが、「工作機械=道具または機械を作る機械」という古典的な規定のイメージを超えて、大量生産・大量消費の時代における部品加工と組立の明確な分離を前提にしてはじめて普及した。また旧来の工作機械の生産方法とは明確に区別される生産方法への転換により、世界の工作機械工業の分布を急激に変化させ、日本の工作機械工業を世界的に屈指のものにした。しかし量産型機械部品加工の対極に位置する金型に代表される一品生産での工作機械による精密加工の意義、そこで必要とされる熟練労働力の形成など、工作機械のNC化をめぐる問題は多岐にわたる。本研究では、量産型機械工業の技術的基礎としてのNC工作機械とその生産技術(=河邑論文)、一品生産的精密加工を代表する金型生産の技術的基礎としてのNC工作機械とその業界の問題(=田口論文)、という課題の両極を取り上げ、またその背景となる日本工業の今日的課題(=富澤論文)を分析した。工作機械をめぐる状況はなお変化の過程にあり今後とも充分な追跡研究が必要である。