この科学研究費補助金による調査出張で、仙台・青森・兵庫周辺の算額を中心に調査し、今後順次に、「鈎股中等円術」、「生石子神社算額」などとして、発表していく予定である。 これらの調査出張で特に気になったのは、例えば兵庫県伊丹市の昆陽寺(こやでら)に有るはずの算額が、阪神淡路大震災によって寺が崩壊した時に失われてしまっていたことだった。算額の保存・調査を急がなければならないことを、改めて痛感した。 また、この補助金の設備備品費によって幾冊かの和算研究書を購入し、さらに光磁気ディスク(MO)を導入して、それらの和算の情報をパソコンに取り込む作業を並行して行なっている。 これまでの過去数年間と今年度前半までの調査・研究の成果を、1998年10月下旬に福岡で開催された第三回東洋天文学史国際会議(ICOA-3)に於いてポスター発表を行ない、日本の江戸・明治期の和算の算額を紹介し、そのレベルの高さをアピールした。 論文としては、「算額(その4)--反転法--」を東洋大学紀要教養課程篇(自然科学)第43号に投稿し掲載予定である。 また、研究課題の後半「・・・その科学教育への活用について」は、未だ論文にはなっていないが、大学の文科系学生の教養課程向けのテキストとして、『教養のための天文学講義』(丸善株式会社)を出版し、その中に和算・算額に関する記事を掲載した。
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