今年度も漢文で書かれた算額の問題文・述文の現代語訳と、和算家の解法および現代的な解法を探り解明することを中心に遂行された。 今年度の算額の調査・収録・研究は、東北(一関・八戸)及び関西(加古川・姫路)を中心に行なった。昨年度末に調査した岐阜県郡上郡の八幡神社の算額のうち、『三斜中等円術』について解法を調べた。 その一部の成果は、次に述べる算額にも生かされている。 また『正・続神壁算法』『算学鉤致解術』『安島直円全集』などの和算の古文書に書き残された算題を調べ、その幾何学図形の情報をパソコンに収録し、数学のテーマ毎に、また図形の種類毎に分類している。 さらに、今年度は本研究の最終年なので、課題の後半部分「…その科学教育への活用について」を実現させた。自作の問題2問と、エレガントな解法を思いついた生石神社の問題の計3問を、算額の啓蒙と、算額奉納の存続・継承を祈願して、問題文・術文ともに漢文で表現して算額を試作し、さらに科学教育に資するために兵庫県高砂市の高砂神社へ僅かばかりの「初穂料」を添えて奉納した。この算額を見て、高校生や大学生、さらには多くの一般の人々にも和算および幾何学に興味を持ってもらえることを期待している。 論文は「算額(その7)-高砂神社への算額奉納-」を東洋大学紀要自然科学篇第45号に投稿した。また、第三回東洋天文学史国際会議の集録が刊行され、ポスター発表した論文が掲載された。
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