本年度は、基本的な外交文書、各国の産業水準やその動向を示す文書・特許などの収集を行い、またそれら軍縮交渉に当たった官僚および生物兵器禁止条約の再検討会議に出席した外交官の間き取り調査、それに1960年代に日本各地で発足した生物化学兵器研究会のメンバーに対しても聞き取り調査を行う予定だった。このうちもっとも成果があったのは日本各地で発足した生物化学兵器研究会のメンバーに対しても聞き取り調査であり、もうひとつは新たに計画に取り込んだ、PRTR(環境汚染物質排出・移動登録制度)の実施を控えての中小企業の準備状況の調査だった。PRTRは化学兵器禁止条約の実効を上げる有力な手段と判断できる。 後者の調査は特に「毒物管理」の観点から実情を知るために行った。それはPRTRを単に環境汚染物質に限定するのではなく、各事業所で使用している化学物質全般の流通管理に利用できないかと考えるからだ。生物化学兵器テロの恐れを米国政府などは強調しているが、こうした状況では一元的な毒物管理が求められる。実効ある管理のためには費用と労力の少ない方法を考えることが必要で、来年度はそうした観点からさらに調査を進める。
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