平成12年度は、(1)前年度に引き続き研究の素材、すなわち史料と文献の入手、(2)その分析と検討、(3)論文発表の準備を行なった。 史料と文献の入手は、高梁市仲田家旧蔵本、岡山大学医学部図書館旧蔵医書、大阪杏雨書屋蔵の古医書などで行なった。 分析と検討では、『解体新書』のドイツ語版原書『解剖学表』の著者クルムス、オランダ語版原書『解剖学表』の著者ディクテンについて行なった。筆者が発掘した新事実、履歴、学統などについて、日本科学史学会2000年大会、関西日蘭協会、第3回備北人文科学学会、日本医史学会合同地方会、第101回日本医史学会大会などで講演すると共に論文にまとめ、『日本医史学雑誌』に投稿した.この論文は現在、編集委員会にて査読中である。また関連論文は、すでに『日本医史学会関西支部機関誌 医譚』75号、76号、『週刊日本医事新報』、『化学史研究』やハンガリーの医史学雑誌上で公表した. クルムスは現在のポーランドのグダンスク(当時の名称、ダンチッヒ〉にあったギムナジウムの教授で大学医学部卒の内科医であった.国立グダンスク公文書館からクルムスのギムナジウムでの業務に関する自身が記録した日誌を入手し、クルムスのギムナジウムでの業務内容や当時のギムナジウムのカリキュラムについて、新知見を得た.ディクテンはオランダのライデンの外科医であったが、ライデン市公文書館から入手した史料を分析し、従来ほとんど知られていなかったディクテンに関する外科医としての履歴を明らかにした.
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