平成13年度には、主にこの4年間に集積した史料と文献を分折・研究し、公表するための作業を行なった。日本が江戸時代に受容した医学・自然科学のヨーロッパにおける学統は、この分折の結果、オランダの外科医界系の知識である可能性が強くなった。日本が受容した蘭医学原書の著者について、その履歴、業績、学統も調査・分析した。対象はプレンク(江戸時代に日本が受容した最多数の蘭原書の原著者)、クルムス(『解体新書』ドイツ語版の原著者)、ディクテン(『解体新書』オランダ語版の翻訳者)である。 ブレンクについて、その業績(ドイツ語著書、ラテン語著書、オランダ語翻訳書、日本語重訳書の目録と各版の相互関係)を整理し、英文論文を完成させた。この論文は現地ハンガリーの医史学会の機関誌に受理され、「プレンクの書誌学的研究(英文)」として公表された。なおこの雑誌には1999年刊と記されているが、実際の刊行年は2001年であった。文献目録にも別記したが、日本を代表する医学史の学会の機関紙『日本医史学雑誌』にも原著を2編公表した。それは「『解体新書』のオランダ人翻訳者ディクテンについての研究」と「『解体新書』の原著者クルムスについての研究」である。またオランダの外科医界の歴史については、日本の代表的な蘭学史・洋学史の学会である洋学史学会の機関誌『洋学』で、「オランダの外科医ギルドの成立」を公表した。引き続いて来年、再来年度にもその論文の続編を同誌上で公表する予定である。『週刊日本医事新報』、『日本医史学会関西支部機関紙 医譚』でも各数編の論文・エッセイを公表した。また、講演を下記の全国学会の大会で行なった。日本科学史学会、日本医史学会。
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