本研究は、研究期間の一形態としての大学共同利用機関の位置づけを考察するため、日本で最初の大学共同利用機関である高エネルギー物理学研究所に第一の焦点を当て、次に他の大学共同利用機関、さらに、附置研究所や政策研究所等の研究機関の事例に焦点を当ててそれぞれの設立経緯、組織の特徴、共同利用の概念について分析した。 高エネルギー物理学研究所は、独自の経緯により最初の大学共同利用機関となったものであるが、そこで検討された共同利用概念は、国立民族学博物館、国際日本文化研究センター、国立遺伝学研究所等の他の大学共同利用機関の設立へ影響することとなった。 ただし、各機関は独自の設立経緯を有するところから、制度上は同じ大学共同利用機関としての位置づけでありながら、実際の運営形態は異なるところとなっている。そこには各専門分野ごとの研究者文化の違い、各機関の長の運営方針の違い、研究の論理と管理運営の論理の相克等、様々な要因が関連していることが明らかとなった。 大学共同利用機関の今後の課題としては、個別の大学ごとに研究体制の整備、研究の推進が図られることとなっている現状において、いかなる研究上のリソースを「共同利用」する事tが国全体の研究成果の向上に寄与しうるかという検討、「国立大学」の「共同利用機関」なのか、「国立」の「大学共同利用機関」なのかの性格付けを明確にすることなどがあげられる。
|