研究概要 |
平成10年度研究課題:剣道における突きの衝撃力に関する基礎的研究 1. 目的:最近、剣道稽古中の突きにより頸動脈壁損傷が原因で脳梗塞によって競技者が死亡するという事故が発生しており、安全性の高い剣道具の規格化を進める上で、喉元を保護する面の突き部(突き垂および顎垂)の安全性についての検討が急務となっている。そこで今年度は、剣道競技者の突きの衝撃力を測定し、剣道具の面の突き垂や顎垂の形状および構造さらには材質などの規格値を検討するための機械的実験を行うに当たっての基礎的資料を収集することを目的とした。 2. 方法:自製による突き力測定装置(キスラー社製3分力測定用ロードワッシャー型式9067使用で、その精度と再現性がきわめて高いことが証明されている)を使用し、日本武道館において大学生の剣道競技者(初段から4段まで)を対象として突きの衝撃力の測定を行った。 3. 結果:1.突き力は、相手に向かって水平・上・左方向へと作用し、水平方向に最も大きく作用する。突き力は個人差(剣道技能の差)により、かなりの相違が認められた。水平方向の最大分力値は平均値で157.2±39.01kgfであったが最大値は261.1kgf,最小値は55.0kgfであった。力積値の平均値は12.25±3.83kgf・sであり最大値は27.59kgf・s、最小値は2.72kgf・sであった。上方向の最大分力値は平均値で48.37±14.39kgfであり最大値で67.02kgf、最小値で15.52kgfであった。力積値の平均値は3.56±1.54kgf・sであり最大値は9.95kgf・s,最小値で0.76kgf・sであった。左方向の最大分力値は5.85±2.86kgf、力積値は0.55±0.43kgf・sとなり、水平方向分力と上方向分力に比較して極めて小さな値であった。
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