今年度は高強度の伸張-短縮サイクル運動が短縮性収縮による跳躍運動のパフォーマンスに及ぼす影響について実験を行った。被験者は、下肢の筋群による最大下の伸張-短縮サイクル運動を疲労困憊に至るまで実施し(約3分間)、疲労運動の前後で短縮性収縮のみによる跳躍及び伸張-短縮サイクル運動による跳躍テストを実施した。さらに2日後及び4日後も同様に短縮性収縮のみによる跳躍及び伸張-短縮サイクル運動による跳躍テストを実施した。疲労運動5分後、血中乳酸濃度は増加し、2日後で血漿クレアチンキナーゼ活性が増加した。乳酸は無酸素性の代謝産物であり、また遅発性の血漿クレアチンキナーゼ活性の増加は筋損傷と間接的に関連しているので、本研究で用いた伸張-短縮サイクル運動は代謝性の疲労と遅発性の筋損傷の両方を誘発したものと思われる。次に跳躍のパフォーマンスについて見ると、短縮性収縮による跳躍パフォーマンスは疲労運動直後で低下するものの10分後にはすでに回復しており、主に代謝性疲労の影響を受けていることが示唆された。一方伸張-短縮サイクルによる跳躍パフォーマンスは2日後に低下し、こらは主に筋損傷の影響によるものと考えられた。さらに下肢の筋群の放電様相も跳躍パフォーマンスと同様の変化を示した。以上のことから、高強度の伸張-短縮サイクル運動は伸張-短縮サイクルによる跳躍と短縮性収縮による跳躍に異なる影響を及ぼすことが明らかとなった。この理由の一つとして、両方の跳躍運動で運動の制御パターンが異なっていることが考えられた。
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