H10年度の研究において、巧みな動きを習得する上で、手引き指導を身体練習の一部に代えて用いる方法や、観察学習を身体練習の一部に代えて用いる方法が、身体練習のみよりも優れてはいなかった。その理由として、これらの方法では身体練習の一部を手引き指導、あるいは観察学習にあてたことにより、身体練習の試行数が減少したことが理由の一つとも考えられる。そこで、H11年度の研究においては、1)身体練習に加えて、手引き指導や観察学習を用いる方法の効果を明らかにする、2)手引き指導や観察学習そのものが、巧みな動きの習得にとって意味がないものか、それとも通常の身体練習ほど効果的ではないものの無駄ではないのかを明らかにすることをH11年度の研究目的とした。 実験1においては、H10年度の研究と同様に身体練習の一部に代えて手引きを指導を用いる混合群、身体練習に加えて手引き指導を行う付加的手引き指導群、手引き指導のみを行い身体練習を行わない手引き指導のみ群、さらに、身体練習のみ群の4群を比較した。その結果、手引き指導のみ群が他の3群に比べて有意に劣っていたが、他の3群間には差はみられなかった。 実験2においては、実験1と同様に、身体練習の一部に代えて観察学習を用いる混合群、身体練習に加えて観察学習を行う付加的観察学習群、観察学習のみを行い身体学習を行わない観察学習のみ群、さらに、身体練習のみ群の4群を比較した。その結果も、実験1と同様に、観察学習のみ群が他の3群に比べて有意に劣っていたが、他の3群間には差はみられなかった。 実験1と実験2の結果から、1)身体練習ができない時には、手引き指導や観察学習を用いると有効である、2)身体練習を行える時には、手引き指導や観察学習は有効なストラテジーではない、の2点が示された。
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