本研究は京都大学胸部疾患研究所より供給を受けた老化促進マウス(SAM)を用いて、加齢に伴う骨格筋での加齢変化を形態的・代謝的・生理学的側面から段階的に捉えた上で、それらの特に退化現象を運動の実施によりいかに抑制できるかを明らかにすることを目的としている。本年度の研究は3年計画の初年度にあたり、SAMの骨格筋の加齢変化を明らかにするために行った。 本年度は20、30、40、50、60週齢の通常飼育を行った雌性SAMを用いた。なお、老化促進マウスのSAM-P系の対照群としてSAM-R系マウスを用いた。各週齢のマウスは後肢骨格筋を用い、生理学的特性として血流維持の状態下において間接極大刺激により張力特性を測定した。さらに、被験筋を摘出し組織染色を行い、筋線維のタイプ分類と組織化学的定量法による酸化系の代謝能力の測定を行った。 SAM-P系マウスにおいて、体重はおよそ15週齢までは急激に増加し30gに達するが、その後は加齢にともなう顕著な体重増加は見られず、また、老化が進行していると考えられる50、60週齢においても体重減少は観察されなかった。筋重量はほとんどの骨格筋で20週齢以降に加齢に伴う重量の顕著な変化は観察されなかったが、強縮張力は40週齢以降低下する傾向があった。また、骨格筋の酸化系能力は加齢に伴う変化は観察されなかった。これらの結果からSAM-P系マウスの加齢変化は生理的機能に顕著に表れやすいことが示されている。 なお現在は、引き続き分析を進行すると同時に、対照群としてのノーマルな加齢変化を示すSAM-R系マウスの飼育を行っているところである。
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