本研究は京都大学胸部疾患研究所より供給を受けた老化促進マウス(SAM)を用いて、加齢に伴う骨格筋での加齢変化を形態的・代謝的側面から段階的に捉えた上で、それらの退化現象を運動の実施によりいかに抑制できるかを明らかにすることを目的としている。本年度の研究は3年計画の2年目にあたる。 本年度は、まず、前年に行った20、40、50、60週齢の通常飼育を行った雌性SAM・P系マウスの後肢骨格筋を用いて、形態的、代謝的なデータを再度検討し、その成果を論文にまとめた。その内容は、加齢に伴い特に40週齢から50週齢にかけて、筋繊維の萎縮が観察されるものの、代謝特性である酸化系酵素活性には変化が認められなかったというものであった。しかしながら、加齢に伴い毛細血管の機能や本数が変化しなかった場合、加齢に伴う筋繊維の萎縮は酸素や栄養の供給に関しては逆にプラスの作用となる可能性があり、このことが代謝特性の退化を抑制している可能性が考えられた。これらの問題を解決するために、今後は毛細血管に関する検討を考慮中である。 また、本年度は当科学研究費の助成を受け、加負荷式運動量測定装置が整備され、運動負荷の影響が観察可能になった。そこで、本年度は基礎実験として、老化促進マウスのSAM・P系の対照群であるSAM・R系マウスを用い、40週齢から60週齢まで自発運動を行わせ、運動量の加齢に伴う変化と運動が後肢骨格筋に及ぼす影響を観察することにした。これらのデータに関しては現在分析中である。 なお、現在は引き続き分析を進行すると同時に、SAM・P系マウスを用い、若齢期と老齢期における運動が後肢骨格筋に及ぼす影響を検討するための準備を行っている。
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