研究概要 |
20、40、50、60週齢の老化促進マウス(SAM)の骨格筋における生理学的,組織化学的特性の加齢変化を調べた。また,萎縮が進行する以前より自発運動を行わせ,運動量の変化と骨格筋の形態を調べた。収縮時間と1/2弛緩時間は加齢に伴い変わらなかったが,強縮張力は40週齢から50週齢にかけて低下した。同じ時期,筋線維の横断面積は低下し,この筋線維の萎縮が張力の低下を引き起こしていたと考えられた。疲労耐性と酸化系酵素活性(SDH)は加齢に伴い変化しなかった。これらの結果はSAMの骨格筋の加齢変化において収縮特性と組織化学的特性の間に関係があることを示唆していた。先研究でSAMの骨格筋(EDL)において萎縮が始めるのは40週齢以降であることが分かった。そこで,40週齢から自発運動を行わせ,加齢に伴う運動量変化と運動が骨格筋に及ぼす影響を観察した。自発運動量は45週齢から50週齢をピークとして,それ以降は加齢に伴い減少した。70週齢で運動実施群と対照群を比較したところ,運動群の相対的筋重量は対照群より高値を示した。これらの結果は,自発運動の実施が筋の萎縮を抑制する可能性を示唆していた。 一連の研究成果と先行研究と間に矛盾はなかったことより,SAMは骨格筋の加齢現象を観察するモデルに十分値すると考えられた。今後は様々な運動条件による筋萎縮の抑制の効果について検討する必要がある。
|