研究概要 |
昨年度、我々は一日あたりの歩行距離と肝臓、心臓、脳、骨格筋及び血漿中の水酸化ラジカル生成量と抗酸化能力の関係を明らかにしてきた。還元型グルタチオンは肝臓、心臓、及び脳において走行距離と有意な相関関係(それぞれr=0.53,p<0.05;r=0.46,p<0.05;r=0.76,p<0.001)、またグルタチオン還元型酵素は肝臓において水酸化ラジカルレベルと有意な相関関係を認めてきた(r=0.56,p<0.05)。これらの結果から、一日の走行距離は抗酸化能力によって決定されていることが明らかとなった。本年度においては、オスとメスラットを対象に3週、6週及び11週間の自由運動トレーニングを行わせ、水酸化ラジカルの生成と除去機構(主としてグルタチオン生成量)を観察した。トレーニングに伴い、歩行距離は6週目まで増大したが、それ以降11週まで一日の走行距離は変わらなかった。トレーニングに伴い、特にグルタチオン生成量の増大が認められたが、トレーニング開始から6週目までは、グルタチオン酸化-還元系の酵素活性が亢進し、それ以降ではγ-グルタミルサイクルの酵素活性が亢進した。これらの結果からトレーニング期間により、抗酸化能力の適応の仕方が異なっていることが明らかとなった。またメスの走行距離はオスに比べ有意に多く、肝臓のグルタチオン酸化-還元系及び合成系の酵素活性もオスに比べ有意に高い値であった。これらの結果は、肝臓のグルタチオン生成が自発的運動による酸化ストレスの除去に重要であることを示唆している。
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