研究の枠組み設定、先行研究の整理、教科体育の諸問題の整理に基づいた初年度の調査結果の分析から、種目完結型、教科完結型などの関わり意識が薄い経験主義的な学習指導の実態があきらかになり、また、教科体育での知識に関する不十分な学習指導の実態や、人権侵害的状況などについての多くの事例が集約できた。本年度は、教科体育の学習指導における「関わり意識」の欠落状況を改善していくことを意識しながら、大学での従来からの「関わり意識」を強調した教材開発の積み重ねや新たな開発、小学校での模擬授業の具体的実践などを行った。 特に、今回の学習指導要領改訂に伴い導入される「総合的な学習の時間」との関わりからは、多様な各教科の既習学習内容や従来学校教育では取り扱ってこなかった内容との関連の強調の重要さを意識することが可能で、また、競争そのものに付随する教科体育が抱えていた諸問題解決のためには、人間関係(対人関係能力)を直接的な学習内容とする教科体育の新しい役割の可能性の検討も必要である。これらのことは、学校教育そのものを教科体育から見直すことであり、また、従来の教科体育の新しい役割取得の可能性について、教科再編成をも視野に入れながら検討し、報告書をまとめた。 なお、本研究で構想していた小学校から大学までに利用可能な人間関係を学習内容とした具体的教材作りは、実験的な段階のままであり、その集約は今後の課題として残された。
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