研究概要 |
1. 研究の目的 心拍数は心臓交感神経と心臓迷走神経の緊張の均衡により制御されている.心拍数による運動終了時点からの自律神経系回復過程の検討では両者の相対関係しか表現されない. この過程を時間周波数解析を行う事で心臓交感神経と心臓迷走神経の活動を分離して評価し,同時に皮膚血流量の変動を時間周波数解析することで心臓以外の自律神経系の回復過程についても定量的に評価を行うのが本研究の目的である. 2. 平成10年度の実施計画とその成果 本年度の目標は主に実験系の確立とプログラムの開発であった.CM_5から導出した心電図をディジタルデータレコーダーに記録し,そのバイナリデータに対するR波検知のプログラムの改良を行った.これまで開発した閾値を用いる方法や1次微分を用いる方法は運動回復過程のような心拍数の変化が大きいところではよい結果が得られなかったが,前4つのRR間隔から次のRR間隔の存在範囲を推定するアルゴリズムを用いることで誤った検知の生起率を大幅に改善することができた. 時間周波数解析は短時間フーリェ変換とウェーブレット変換の双方で検討した.時間変化に対する追従性はウェーブレット変換の法が優れていたが,短時間フーリェ変換とは異なり,その絶対値は意味を持たない.現在2例だけであるが,解析の結果から運動回復過程においては心臓副交感神経系の回復が早いのではないかという従来の予測を裏付ける結果を得ている.また,皮膚血流量の相対的変化も心拍変動と同様な時間変化を示した.
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