| 研究概要 |
野球バットは,試合で最高のパフォーマンスを発揮するために,より機能的で使いやすいことが要求される。バットの使い良さは,選手の立場でみると,振りやすい,ボールが良く飛ぶ,打撃時の振動が少ない,などと表現されるが,これはいずれもバットやボールなどの用具に絞って物理的な解析をしても,選手が使いやすいバットを究明するまでには至らない。
本研究では,バットの特性のうち,重心位置や重量バランス,慣性モーメントを自由に変えられるバットを作製し,それらの特性が選手のバットスイング(技能)にどの程度,どのように影響しているかを究明するものである。
被験者は大学硬式野球部所属のレギュラークラス選手6名とした。測定用バットには,重心位置と重量が変えられる「重心位置可変バット」を使用した。被験者には9種類に設定したバットを用いてティーバッティング台の上に固定された実験用ボールを打たせた。被験者が行う打撃動作において,バットの位置を,3次元位置計測器を用いて測定した。それをもとにx軸,y軸,z軸各成分の直線速度,及び各成分の回転速度を求めた。また,バットの重心位置における直線速度も算出した。
実験の結果,バットの重量と重心位置はともに,スイングの線速度,各速度に影響していること,すなわち,バットの重量が小さいほど,また重心位置はグリップに近いほどスイング速度が速くなることが判明した。このことは,バットの特性がスイング動作に影響しないことを意味するものであり,先行研究とは異なる結果になった。この原因は,現在考察中でまだ結論が出ていない。
次年度には,本年度に得た結果を詳細に検討し,バットの特性が選手のスイング技術に及ぼす影響を究明する予定である。
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