研究概要 |
【目的】長期の高脂肪食摂取による持久力増大のメカニズムを明らかにするとともに,異なった脂肪酸組成の高脂肪食を摂取した場合の,骨格筋の糖質・脂質代謝に対する影響について検討した. 【方法】実験動物としてWistar系の雄ラットを用い,これを普通食群及び高脂肪食群に分け飼育した.高脂肪食群は脂肪カロリー比が40%と60%の高脂肪食群,また動物性,植物性及び魚油系高脂肪食と脂肪酸組成が異なる高脂肪食群に分けた.5週間後ペントバルビタール麻酔下,骨格筋を摘出し,グリコーゲン含量及び酸化系酵素活性を測定した. 【結果及び考察】普通食群に比較し,40%及び60%高脂肪食群では上腕三頭筋のグリコーゲン含量が有意に低下したが,水泳運動による持久的運動能力は高脂肪食群で高かった.クエン酸合成酵素活性及び3-HAD活性はそれぞれ約23%,47%の増加が見られた.異なった高脂肪食を摂取した場合は,体重に違いは認められなかったが,脂肪組織重量は動物性及び植物性高脂肪食群で有意な増加が認められたが,魚油系高脂肪食では増加が認められなった.また,血中中性脂肪及び遊離脂肪酸濃度は動物性高脂肪食で増加したが,植物性及び魚油系高脂肪食群では逆に低下した.上腕二頭筋のクエン酸合成酵素活性は植物性及び魚油系高脂肪食群で増加する傾向が見られ,3-HAD活性は魚油系高脂肪食摂取で有意に増加した. 以上の結果より,長期の高脂肪食摂取は筋グリコーゲン含量を低下させるが,酸化系酵素活性特に脂質代謝に関与する酵素活性の増大により,運動時における脂質利用が亢進し,筋グリコーゲンを節約することにより持久力が増大したものと考えられる.
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