本研究の目的は、わが国で、スポーツが普及・発展していく過程において、日本文化がスポーツに対してどのような影響を及ぼし、また日本文化と融合するなかで、わが国のスポーツはいかなる性格や特性を形成するに至ったかということを明らかにすることである。つまり、「日本文化とスポーツの関係性」を明確化しようとする試みである。 スポーツの構成要素としては、最もミクロなレベルで「身体性」、「遊戯性」、「競争性」をとりあげ、スポーツ文化の制度的・構造的側面としては、「スポーツ規範」、「スポーツ組織」、「スポーツ行動様式」および「スポーツ観」をとりあげて、スポーツ文化の理念型を構築した。 ここでいう「スポーツ文化の理念型」とは、「スポーツの意味体系-シンボルシステム」にほかならず、スポーツの行為システム、社会システムと相互に連関し合って一環を成しているものであるが、それらとは明確に峻別されるべき抽象化された概念的構成物なのである。その具体的内容として、(1)認知的関心の優位な、観念的・信念的意味をもつシンボルとしてのスポーツ技術や知識、(2)カセクシス的関心の優位な、表出的意味をもつシンボルとしてのスポーツ観、(3)評価的関心の優位な、価値志向的意味をもつシンボルとしてのスポーツ規範(ルールやマナー)を有するのである。このそれぞれの具体的内容の考察は、スポーツ文化がシンボルとして存在することによって、スポーツの意味や価値が伝達され、スポーツ行動という具体的な行動のコミュニケーションを成立・安定化させることが可能になり、観察可能なものとして分析されうるのである。 したがって、来年度は、本年度構築した「スポーツ文化の理念型」に基づいて、「身体性」、「遊戯性」、「競争性」を、その中に内在させている「スポーツ行動」について実証的に研究を進めていくことにする。
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