本年度は、研究の最終年度であり、前年度まで構築してきた近代スポーツの理念型と我が国のスポーツ文化との乖離を計るための予備調査に基づいて、「わが国のスポーツ文化に対する日本文化の規定性に関する社会学的研究」の本調査を実施した。 調査対象は、福岡市体育協会加盟のスポーツクラブ員であり、配布数は600、回収数は392、有効回答は378であり、有効集計率は63.0%であった。 スポーツの構成要素である、「身体性」、「遊戯性」、「競争性」とスポーツ文化の構成要素である「スポーツ観」、「スポーツ行動様式」、「スポーツ規範」をとりあげてスポーツ場面における日本的特性を明らかにすることによって、日本文化のスポーツへの規定性を実証的に究明した。 その結果の一部にしか過ぎないが、「伝統的価値意識」、「伝統的行動様式」、「伝統的規範」のそれぞれにおいて、これまでに指摘されている「日本人論」の特徴が性別、年齢を問わず表れており、やや若い世代においてその特徴がポイント的に下回っているということであった。つまり、スポーツの世界でも、日常の世界でも、ある程度「伝統的な事柄」は守っていかなければならないという回答が、スポーツクラブ員には特徴的にみられた。 ただ、スポーツの理念型の乖離で言うと、「身体性」に重点を置く傾向が顕著であり、「遊戯性」や「競争性」に対しては、年齢や競技キャリアによって差がみられ、一般的な傾向は明らかにならなかった.
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