| 研究概要 |
【目的】インスリン感受性や脂肪蓄積と筋線維組成の間には関連性が指摘されているが,その原因については不明な点が多い.本研究では,骨格筋の組織化学的特性とインスリン感受性および脂肪蓄積の関係について,遺伝的に筋線維組成の異なるラットを用いて検討した.
【方法】被検動物として選択交配法により作成した速筋線維優位ラット(FFDR,雄,n=6)とランダム交配により作成した対照群(CR,雄,n=8)を用いた.インスリン感受性の測定には,euglycemic clampを用い,clamp開始後60-90分に注入されたグルコース注入量(GIR)からインスリン感受性を評価した.なお,clamp中の両群間のインスリン濃度には有意差を認めなかった.clamp直後に筋を摘出し筋線維組成と毛細血管分布の算出に用いた.被検筋は腓腹筋(外側頭深層部),ヒラメ筋,足底筋とした.さらに腹腔内脂肪量を求めた.
【結果と考察】両群間の体重,脂肪重量には差が認められなかった.腓腹筋では%type IIB線維において,ヒラメ筋では%type IIA線維においてFFDR群の方が有意に高値を示し,また腓腹筋,ヒラメ筋とも%type I線維はFFDR群の方が有意に低値を示した.一方,足底筋の筋線維組成には両群間の差はみられなかった.全ての被検筋において毛細血管密度,毛細血管/筋線維比,筋線維周囲平均毛細血管数に差は認められなかった.さらに,GIRにも有意差はみられなかった.その背景として対象ラットが若齢(8-9週齢)であること,速筋線維優位であった腓腹筋,ヒラメ筋がもともと酸化能力や糖輸送担体量の高い筋であることなどが考えられる.今後はさらにインスリン感受性や脂肪蓄積に影響を与えると考えられる高脂肪食や身体活動量の変化を加味した研究を行う必要があると考えられる.
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