研究概要 |
平成10年度は,寒冷下での運動負荷テストを脊髄損傷の男子車椅子マラソン競技者5名(車椅子競技者)と対照の一般大学生男子5名(非鍛練者)について検討した.被験者に対しては,本研究の目的,内容を十分に説明した上で参加頂いた.測定の時期は,平成10年10月上旬より平成11年1月下旬の10時〜15時に実施した.測定条件は,平均環境温度25℃と12℃,ともに平均相対湿度60%そして平均気流0.5m/secの測定室に,長袖シャツに長ズボンで30分間安静の後,arm crankingエルゴメータ運動を20watts(50rpm)で60分間負荷した.測定項目は,安静と運動中の鼓膜温,平均皮膚温,産熱量そしてカテコールアミン,運動中の寒冷血管反応である. 持久的運動能力の指標である最大酸素摂取量は,車椅子競技者が大学生より大きかった.寒冷暴露下での安静中の鼓膜温は,車椅子競技者が緩やかに低下しているのに対し,大学生では低下が大きかった.また運動中の鼓膜温は,車椅子競技者の上昇は大きく,運動開始後40分以降は横這いであった.平均皮膚温は,寒冷暴露後の安静で両群低下し,運動開始後より30分までは,車椅子競技者より大学生の低下が大きかった.産熱量は,寒冷暴露後の安静で両群亢進し,さらに運動により急上昇したが,終始車椅子競技者が大きかった.また運動開始30分経過後の産熱量は,車椅子競技者と大学生ともに定常状態であった.運動開始より30分間の寒冷血管反応は,車椅子競技者が大学生より抗凍傷指数が高かった.カテコールアミンは,アドレナリン,ノルアドレナリン,ドーパミンともに25℃の安静時より寒冷暴露後(安静状態)30分,運動開始後30そして運動終了時と高くなり,その上昇は,車椅子競技者が大学生より大きかった. 寒冷下での運動に対して体温調節の感受性や熱産生反応は,車椅子競技者が一般大学生より大きかった.
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