研究概要 |
平成11年度は,暑熱下での運動負荷テストを脊髄損傷の男子車椅子マラソン競技者3名(車椅子競技者)と対照の一般大学生男子3名(非鍛練者)について検討した.被験者に対しては,本研究の目的,内容を十分に説明し了解を得た.測定の時期は,平成11年8月上旬より平成11年11月中旬に実施した.測定条件は,平均環境温度25℃と35℃,ともに平均相対温度60%そして平均気流0.5m/secの測定室に,半袖シャツに長ズボンで30分間安静の後,arm crankingエルゴメータ運動を20watts(50rpm)で60分間負荷した.測定項目は,安静と運動中の鼓膜温,平均皮膚温,産熱量そしてカルコールアミン,運動中の寒冷血管反応である. 暑熱暴露中の安静鼓膜温は,車椅子競技者も大学生もほぼ同様であった.また運動中の鼓膜温は,車椅子競技者の上昇は大学生より大きかった.平均皮膚温は,暑熱暴露後の安静で両群既に増加しており,運動開始後より30分までは,車椅子競技者が大学生より増加が大きかった.産熱量は,暑熱暴露後の安静で両群亢進し,さらに運動により急上昇したが,終始車椅子競技者の産熱量が大きかった.運動開始より30分間の寒冷血管反応は,車椅子競技者と大学生の指皮温はきわだった差異は認められなかった.カテコールアミンは,アドレナリン,ノルアドレナリン,ドーパーミンともに25℃の安静時より暑熱暴露後(安静状態)30分,運動開始後30分そして運動終了時と高くなり,その上昇は,車椅子競技者が大学生より大きい傾向であった. 暑熱下での運動に対して体温調節の感受性や熱産生反応は,車椅子競技者が一般大学生より低い傾向であったのは,脊髄損傷が暑熱下運動時の体温調節に少なからず影響を及ぼしていることが示唆され,熱障害発生の予防として積極的な水分補給等の対策が望まれる.
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