研究概要 |
筋疲労による大脳皮質運動野の興奮性変化の機能と定量化を明らかにするために,本研究の目的は,まず,筋収縮の作業条件の違いが,経頭蓋磁気刺激法によって引き起こされた運動誘発電位(MEP)およびSilent Period反応にどのような変化を示すかを,そして,二番目に100%MVCおよび50%MVCの筋出力によって起こった筋疲労前後の興奮性変化が二重刺激による皮質運動野の抑制および促通反応にどのような影響を与えるか,あるいは,筋疲労中にMEPは,どのように変化するかを明らかにすることである. 二つの作業条件は,10〜70%MVCにまで2秒間で滑らかに筋力発揮する方法と20,33,46および60%MVCの4つの強度でそれぞれ一定強度で20秒間筋力発揮する方法である.磁気刺激による4つのMEP振幅はconstant法による4段階の%MVCの増加に伴って増大した.しかし,ramp法で4段階の%MVC強度が増加する一方で,MEP振幅は低下した.ramp法によるMEPの低下パターンは,皮質運動野および脊髄系において,筋力とスピード制御に対する付加的な興奮性の機序によることが示唆された. 二重刺激によるテスト刺激のみ,テスト+ISI3msとテスト+ISI10msの刺激方法は,皮質運動野の皮質内抑制および促通応答を評価するのに使われている.100%MVCの筋疲労前より後で,3つのMEP振幅は低下した.疲労後ISI3msの%MEPが前値より低下したが,ISI10msの%MEPは増大した.一方では,50%MVCの筋疲労前より後で,3つのMEP振幅もまた低下した.しかし,疲労後ISI3msの%MEPは前値より増大した.筋疲労後,その興奮性は短い最大運動では促通のみを増大させたが,長い最大下運動では,抑制も促通も両方とも増大させた.また,両運動中,筋疲労と共に筋力および積分筋電図は徐々に低下し,Silent Periodは短くなったが,MEP振幅は最大運動で一定のままであったが,最大下運動では一定のままか徐々に増大した.
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