研究概要 |
高齢者に多くみられる転倒の原因の一つに、「歩行中に手に物を持っていた」ことが指摘されている。本研究では、荷物の持ち方が体格指数(BMI)の異なる高齢者の歩行動作に及ぼす影響をバイオメカニクス的分析によって検討することを目的としている。被験者として、健康な高齢女性12名を体格指数(BMI)を基準に過体重群(BMI>24.1)、正常群(20.1<BMI<24)、るい痩群(BMI<20)の3群(各4名)にわけ、荷物を持たない通常の歩行と、荷物保持歩行中の転倒が多かったと報告されている3種類の持ち方(身体の横に片手で下げる、身体の前に両手で保持する、背負う)で4kgの荷物を持った歩行の計4試技を実験試技として行わせた。歩行動作は、三次元動作分析法でとらえるため、LED型シンクロナイザで同期した2台のVTRカメラで撮影し、パソコン用三次元解析プログラムで、歩幅や足先の最高挙上点などを分析した。 荷物を持たない通常の歩行の場合、るい痩群と正常群の歩幅(0.628mと0.627m)と足先の最高挙上点(0.119mと0.105m)に比べ、過体重群の歩幅は大きく(0.691m)、足先の最高挙上点も高かった(0.l63m,p<0.05)。荷物を持った場合には、統計的な有意差がみられなかったが、過体重群は、身体の前に両手で荷物を保持した場合、通常の歩行に比べ歩幅が小さくなり、足先の最高挙上点も低くなる傾向にあった。これに対し、るい痩群や正常群では、通常の歩行に比べ歩幅が大きくなるか、足先の最高挙上点が高くなる傾向にあった。歩幅が小さく、足先の最高挙上点も低くなる歩行動作は、高齢者が転倒しやすい歩行動作として指摘されていることから、過体重群にみられた歩行動作は、転倒の危険性があると推察される。今後、身体各部の角度変化などを分析して、さらに詳細に検討する予定でおる。なお、これらの研究結果を国際バイオメカニクス学会に発表申し込みした。
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