アメリカの大学体育学部・学科の改革に関する文献調査の結果から、過去数十年を経て、アメリカの体育・スポーツの社会的背景は、フィットネスの個性化、生活水準の向上、スポーツの成長、教員の減少からくる職業の多様化、研究の進歩などの分野でカリキュラム等の改革が見られた。この歴史過程に、名称問題を含めた体育にとっての学体系の再編成を重ねてみると、体育の専門職教育の基本的な性格は、社会的ニーズに応じて拡大され、そして学生のために新たな職業進路を与えたと結論付けることができるであろう。 アメリカの体育における学問・研究教育の基本的な性格は、研究が進み、かなりその研究領域の知識や研究成果が(職業教育を含めた)プログラムやカリキュラムにも普及してきたといえる。しかし、この両方の統合がキネシオロジーという名称のもとで起きてきたとしても、なお専門職と学問教育のバランスが体育学部・学科組織の重要な問題となって存在している。現時点では、そのバランスをどうするか、また体育学の体系の再編成ないしは統合の問題は、解決されていない。 これまでのアメリカの体育学部・学科の議論の展開から、一部の大学ではすっかり職業教育を捨ててしまう場合があるように、おそらく現在の一つの大学で専門職教育と学問研究教育の両方を担当するよりも、いずれかの道を選択し大学の特徴をアピールしてゆくことが、学生募集や専門教育をしてゆく傾向がアメリカににはみられた。これらの結果を日本との比較検討してゆく上での帰納仮説とし、今後大学体育学部・学科の専門教育の実態及び体育の専門性の内容と照し合せながら研究を進めてゆく予定である。
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