研究概要 |
12年度は、1)活動交代時の外側腓腹筋単一運動単位の活動様相を観察し、交代時のα運動ニューロンに対するシナプス入力の構成パターンの検討、および2)筋作業持久能力からみた活動交代の有用性および意義を検討した。被験者は長座姿勢で、足関節角度を110゜もしくは130°に保ち、背屈方向への一定負荷(10%MVC)に抗して右脚足関節を保持し続ける下腿三頭筋の等尺性収縮を実施した。同時に表面電極導出法により、下腿三頭筋(外側腓腹筋,内側腓腹筋,ヒラメ筋)の筋電図を記録した。また、単一運動単位の導出記録には活動電位を安定して導出できるコイル状の筋内埋入電極(Kurata et al.)を用いた。 まず実験1)において、活動交代時に、外側腓腹筋が活動参加した際、その活動は徐々に増大したが、個々の運動単位を観察すると数個の運動単位が時間経過と共に順次活動参加し、各々の発火頻度も時間経過と共に増加した。一方、活動を休止するときには活動参加している複数の運動単位がほぼ同時に、かつ比較的急激に休止し、活動参加の履歴を逆にたどらなかった。これらのことから、交代時の表面筋電図振幅の増減に運動単位のrecruitmentが強く関与し、recruitment時の脊髄α運動ニューロンに対するシナプス入力が、単純に逆のパターンでderecruitment時に適用されるのではないことが推察された。 次に実験2)において、活動交代と筋疲労との関係を検討したところ、低強度の筋作業を長時間持続する場合、協働筋の間で活動を交代するような筋活動様式は、最大限の筋出力発揮を要求する機能に影響が少なく、より長く筋作業を持続することができ、翌日の筋作業の持続にも比較的影響が少ないことが示唆された。神経性調節機能の観点から筋持久力および筋疲労の改善に貢献できる可能性があるのではないかと考えられた。
|