1. 本研究の目的は、各種オリンピック関連映像を対象にして、映像として記録されたオリンピズムの象徴的表現を分析・記述・解釈し、明らかにすることにある。そのことによって、スポーツ映像の制作者たちが捉えたオリンピズムという根本的思想・理念が確認され、暗黙の文化再生産装置としてのスポーツ映画のメディア性をも明らかにしようとした。次年度には教育におけるオリンピズム観形成に関する調査研究を実施する予定である. 2. 10本のオリンピック関連の映画を収集し、その映画に関連した文献および主要な解説をデータベース化した。収集整理にあたってはマルチメディア対応のパソコンを活用した。同時に、オリンピック関連の研究書を渉猟し、特にオリンピズム観について分析・整理を行った。それらの結果の一部は研究会・学会等で報告し、クーベルタンが提唱して以来、幾多の主張を交えることによって多様な解釈が可能な状況にあることを報告した。 3. 各オリンピック関連映画のオリンピズム表現の場面をビデオで編集し、その分析・記述・解釈を行った。それらの一部の結果から、オリンピズムの映像表現は、個人主義、民族主義、国家主義、国際主義、超国家主義という多層的な多次元にわたって表現されていることが明らかになった。また、オリンピックは平和の祭典であるというような固定的なイメージが映像メディアを通じて流布され再生産されていることを国際学会で報告した。 4. さらに、1998年長野冬季五輪大会開会式のテレビ放映を対象にして、それらの映像にみられるオリンピズムの表現がローカリズムからグローバリズムにいたるまで表現されていることを確認し、学会等で報告した。
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