研究概要 |
本研究は2年間にわたる計画で進行中であり,初年度は,骨格筋収縮・構造蛋白質の血液中濃度の定量法を確立し,上腕屈筋群のエクセントリック運動に伴うこれらの経時的変化を明らかにすることを目的とした。骨格筋構造蛋白質のうち,本研究において血液中濃度の定量を試みようとしているものは,ミオシン軽鎖,ミオシン重鎮,アクチン,トロポニンTおよびI、デスミンである。このうち,ミオシン軽鎖,トロポニンTおよびIについては心筋損傷のマーカーとして既に用いられ,キット試薬も開発され,発売されている。心筋と同様なプロトコールあるいはそれを応用し,ヒト骨格筋のミオシン軽鎖,トロポニンTおよびIのモノクローナル抗体を用い,エンザイムイムノアッセイ(ELISA)によって定員できるものと考えた。そこで,ELISAに必要なマイクロプレート・リーダーを初年度の研究経費の中で購入し.その使用法に精通し.これまでの研究報告を参考に,骨格筋のミオシン軽鎖,トロポニンTおよび1の定員法の確立を試みた。しかし,抗体の特性のためか,信頼性が高いデータが得られるところまでは,もう一歩の状況である。また,同様に,アクチン,ミオシン重鎮,,デスミンの抗体も購入し,ELISAによって定量を試みているが.モノクローナル抗体の精度の問題や交差反応の影響などもあり,これらについても信頼性の高いデータが得られるまでには至っていない。 しかし,平成11年度において,上腕屈筋群のエクセントリック運動に伴うMRIや筋機能の変化,さらには筋生検によるサンプルの組織学的な検討から推察される筋損傷と,血液中の骨格筋構造蛋白質濃度の変化との関係を明らかするという当初の目標を達成するための基礎づくりは進行しており,ようやく信頼性の高いデータが得られる目途が立った状況である。平成11年度の前半には当初から目標としていた.6つの骨格筋構造蛋白質の血液中濃度の定量法を確立できる予定である。したがって,現時点においては,まだ今回の研究を基にしての研究発表はない。
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