本研究は、スペシャルオリンピックス日本・第2回夏季ナショナルゲーム・神奈川大会に参加したボランティアは、ボランティア活動の経験を契機として障害者問題に対する意識を醸成させ、さらに、日常生活において障害者問題が意識として定着する要因を探ることを目的とした。調査は、ボランティア活動前、ボランティア活動後、ボランティア活動の1年後に、同一対象者に障害者問題に対する意識を測定する調査を実施した。 主課題である知的障害者のスポーツイベントのボランティア活動が障害者問題に対する意識の醸成・定着に及ぼす影響を明らかにするには、ボランティア活動への期待と充足の関係を捉える必要があり、ボランティア活動の前・後の2回にわたって調査した。その上で、障害者及び障害者スポーツに関する「経験」と「知識」及び障害者問題に対する意識の「総合的影響」をボランティア活動前とボランティア活動から1年後に調査する手法を用いた。調査は、平成10年7月(1次)、平成10年10月(2次)、平成11年10月(3次)に実施した。集計結果から、以下のような知見を得ることができた。 1.ナショナルゲーム前にイメージしたボランティア活動への「期待や目標」に対して、ボランティア活動後の「充足」の割合は全体として低かった。 2.ナショナルゲームと8競技種目に対してボランティア活動後に「成功」と回答した割合は約70〜80%と高かった。しかし、ボランティアの役割に対して「満足である」と「どちらかといえば満足」に回答した人を合わせると、「満足」の割合は約半数であった。 3.ナショナルゲームの参加後から現在までの約1年の間において、障害者に関する「経験」に対してボランティア活動前に「かなりあった」人がボランティア活動後の「経験」に「大変影響があった」に回答し、「ある程度あった」人は「まあまあ影響があった」と回答する傾向が示された。一方、ボランティア活動前に「経験」が「まったくなかった」と「あまりなかった」に回答している人はボランティア活動後にも「まったく影響がなかった」と「あまり影響がなかった」と回答する傾向が示された。また、ボランティア活動前に「知識」として「知っていた」人はボランティア活動後の「知識」に「大変影響があった」と「まあまあ影響があった」と回答し、「経験」と同様の傾向が見られた。 4.ボランティア活動後における障害者問題に対する「関心」は7〜8割と高く、ナショナルゲームのボランティア活動の経験が、障害者問題に対する意識の醸成・定着に影響を及ぼすことが示唆された。
|