初年度は研究目的に応じた的確なモデル動物の開発と個々の筋内に発生したフリーラジカル(FR)関連物質定量法の確立に取り組んだ。 モデル動物:物理的筋損傷の主たる要因として、収縮中の筋を強制伸展するエキセントリック運動が考えられる。一方、FR等の生体内代謝産物による筋損傷は、物理的な筋損傷とは区別されなければならない。そのためエキセントリック運動を全く含まない形式(コンセントリック運動のみ)の実験的ラットトレーニングモデル及び装置を開発する必要があると考えた。 初年度は、府酔下のラットの坐骨神経を直接電気刺激して、コンセントリック運動のみを行わせる装置を開発した.このモデルにエキセントリック運動を除外した条件で血流制限を加えることで、本研究の目的とする条件を満たすことが可能となった。 ・このモデルを用いて、血流制限時と非制限時の運動成績は、血流制限時には運動量の有意な低下が明らかとなった。しかし運動後の筋肉を組織学的検討の結果、実際の運動とは異なり全くの局所運動となるため、心拍出量の上昇等が伴わず必ずしも適切なモデルとは言い難いことが判明した.従って、今後従来より本研究室で用いているラット筋力トレーニングモデルに対して同様に血流制限を加え、上記モデルとの比較を行い、どのモデルが研究目的を達成するためにより有効であるかを検討する。 定量方法の検討:FRは、半減期が非常に短いため、迅速なサンプリングが必要となる。 ・初年度は比較的半減期が長く発生したFRを分解する酵素(グルタチオンパーオキシダーゼ)の測定を試みた。ラット後肢下腿筋(前脛骨筋、長指伸筋、ヒラメ筋、足底筋、腓腹筋)では最も持久性の高いヒラメ筋が他の4つの筋よりも約5倍高い値が得られた.これはヒラメ筋でFRの発生率が約5倍高いことを示しているものでもあり大変興味深い結果であると同時に、定量法の妥当性を示すものと考えられた。
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