研究概要 |
本年度は昨年度試みたモデル動物(麻酔下の電気刺激によるコンセントリック運動のみの実験的筋力トレーニングモデル)の筋に対し、実際にフリーラジカルを分解する酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)の定量を行った。その結果、血流制限時とフリーの状態でGPXに変化は見られなかった。また、安静時の値とも大きな違いが認められなかったことから電気刺激による実験的筋カトレーニングモデルに対して以下の結論を下した。1)血流制限時とフリーの状態における運動成績は、前者で運動量が有意に低下していた。2)しかし運動後の筋肉を組織学的に検討した結果、筋損傷の度合いには差が認められなかった。3)加えて、筋内GPXにも有意な変化が認められなかったことから、4)電気刺激による筋力トレーニングでは実際の運動とは異なり全くの局所運動となるため、心拍出量の上昇等が伴わず必ずしも適切なモデルとは言い難いことが判明した。従って、モデル動物を従来より本研究室で用いているラット筋力トレーニングモデル(Tamaki,T et al.,Med.Sci.Sports Exerc.1992)に切り替え、同様の実験を行った。運動直後から3時間間隔で24時間後までのサンプルを準備し、凍結保存した。次年度にはGPXのポリクロナール抗体の入手が可能となるため、組織切片による酵素抗体法で時間経過に伴うフリーラジカルの発生・消長を検討することを予定している。まず、通常の状態で筋カトレーニングを行った場合のGPXの発生・消長を明らかにし、次に主働筋に対する血流阻害を行い同様に筋力トレーニングを行った場合との違いを比較検討することで、血流阻害と運動、さらにフリーラジカルの発生との関連性を明らかにできるものと考えている。
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