研究概要 |
運動トレーニングが感染に対して抵抗力を高めるか否かを検討した.マウスに一定期間の運動トレーニングを負荷し,トレーニング終了後腹腔内に大腸菌を攻撃した.そしてその後のマウスの生存数,生存率を追跡した.被検動物は5週齢のddY系雄性マウスを用いた.マウスはトレーニング群と対照群に分けられた.トレーニング運動は水泳運動を用い,頻度は5回/週であり,期間は1,2,3,4,6,8,12週間とした.一過性の運動の影響を避けるために,大腸菌の攻撃時,及び1回の運動時間を検討した.一過性の運動群と対照群に大腸菌による攻撃を行い(運動時間は15分,30分,60分,90分),時間経過を追った.その結果,トレーニングにおける1回の運動時間は1時間に設定し,腹腔内への大腸菌攻撃は最後のトレーニングが終了した24時間後に実施することにした.マウスの生存状態は,菌の攻撃後5日間にわたり観察した.飼育条件はトレーニング群,対照群とも12時間の明暗サイクルで行い,食餌・水分の摂取は自由とした. マウスの生存の可否は48時間以内に決定した.トレーニング期間は1,2,3,4,6,8,12週間であったが,腹腔内への大腸菌攻撃の結果,すべてのトレーニング期間群において,生存数,生存率とも対照群のそれを上回った.統計的に有意な差がみられたのは2,4,12週間トレーニング群であった.この成績から運動の習慣化は安静時の感染に対する抵抗力を高めることが示唆された.運動トレーニングの継続が生体の防御能を亢進する可能性が示されたが,これらの背景となるメカニズムについては不明である.次年度はこの背景について検討を試みたい.
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