研究概要 |
本研究は、咬合力発揮時に随意的等尺性および短縮性足底屈の下腿三頭筋運動ニューロン活動様式を検討した. さらに咬筋と頸部周辺筋群の相互活動関係について、筋電図学的解析によって明かにする目的で行った. 被験者は健康成人10名を用いた. 対象筋は咬筋と下腿三頭筋のヒラメ筋(SOL)・腓腹筋(MG)および胸鎖乳突筋(SCM)から運動単位(MU_s)と表面筋電図を双極誘導した. 下顎振動負荷による持続性振動誘発反射(TVR)を咬筋に発生させ、随意的咬合とTVRの不随意的軽度咬合時における足底屈動作を実施した. そのとき膝窩部の頸骨神経を電気刺激し、下腿三頭筋運動ニューロン(Sol-MN_S, MG-MN_S)のH反射を測定した. その結果、最大咬合力(MVO)時に協同活動を伴うSCM-iEMGは、ほぼ咬合力に比例して増加した. 一方、MVOと頸部MVC同時測定したSolとMGのH反射は、SolよりもMGに促通を引き起こした. その促通は頸部屈曲よりも咬合の方に強く影響を及ぼすことがわかった. さらにTVRmaxのH反射では、MGにコントロールよりも著明な増加が出現した. さらに最大随意的咬合力発揮ではSOL-MN_SとMG-MN_Sに大きな促通が引き起こされたが、弱咬合力発揮では、MG-MN_Sにのみわずかな促通しか見られなかった. しかしTVRの軽度咬合力発揮時では最大随意的咬合力時と同様にSOL-MN_SとMG-MN_Sに顕著な促通が認められた. 一方、TVRの軽度咬合力発揮時に下腿三頭筋による等尺性足底屈と短縮性足底屈動作を実施した場合、SOL-MN_Sに比べてMG-MN_Sに顕著な促通が認められた。そしてMG-MN_Sの促通はTVR不随意的軽度咬合力発揮時の短縮性足底屈動作においてより増強された. 以上の結果から動的な筋運動は咬筋運動ニューロン活動との強い中枢性神経連絡を持っていることが示唆された.
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