本研究は動的及び静的筋活動に伴う筋形状の変化が筋循環に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。本年度は、足関節角度90度から100度に伸展する動的足底屈運動を取り上げて検討した。被検者は活動的な20歳代女性6名であり、負荷は20%MVCと50%MVC、運動時間は3分、運動のテンポは15回/分であった。運動時の大腿動脈血流量(超音波ドップラー法)は運動中有意に増加した。また近赤外分光法で測定した腓腹筋内側頭の酸素化ヘモグロビン(HbO_2)と脱酸素化ヘモグロビ(Hb)は、運動開始20秒までは筋収縮・弛緩に拘わらず、前者は低下、後者は増加を示した。しかし、30秒以後は、筋活動に依存した変動が明らかになり、筋収縮・弛緩に伴って、互いに逆方向に増減を繰り返した。その変化量は20%MVCより50%MVC運動の方が顕著であった。血液量(総ヘモグロビン量;HbT)は運動開始初期から、筋収縮によって減少するが、1回の収縮による減少量は3分間ほぼ一定であり、大腿動脈血流量の変化と類似していた。それに対して、筋弛緩後の血液増加量は時間と共に漸増し、その増加にはHbO_2の変化が密接に関連していた。したがって、運動中に見られた体肢全体の血流増加は、主として活動筋における弛緩期のHbO_2を増加させたことが示唆された。一方、腓腹筋内側頭(MG)の筋束長の変化を測定した(超音波B-mode法)ところ、活動期に短縮し、弛緩期に伸長した。しかし、筋収縮・弛緩に伴う血液量や筋酸素化動態の変化には、筋の形状変化だけでなく、筋収縮に伴う筋内圧の変化が大きな影響を与えている。本研究では活動中の筋束長は強度依存で大きくなることが明らかになり、それが循環に対して、影響を与える可能性は示唆されが、その影響を定量化するには至らず、今後の課題として残された。
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