研究概要 |
(1)暑熱・運動時に観察された子どもの躯幹部皮膚血流量(LDF)増大のメカニズムを,8名の思春期前男児と11名の若者男性における暑熱環境下(25℃・45%rh環境下の60分間下肢温浴(42℃))の局所発汗量(msw)とLDFの対応関係から検討した。(a)mswなしにLDFの増加,その後の(b)mswとLDFの比例的増加において,子どもが若年成人より胸・背で大きな値を示した。しかし,(a)(b)とも前腕・大腿では有意な年齢群差はみられなかった。以上の結果,暑熱暴露時に躯幹部でみられた子どもの高い皮膚血流量は,交感神経のtoneの低下が大きく,発汗神経由来の血管拡張物質に対する感受性が高いことに起因することが示唆された。(2)7名の高齢者と7名の若年成人の暑熱環境下(35℃環境下での60分間下肢温浴)における発汗波頻度(fsw)vs平均体温(Tb)およびmsw vs fswの関係を比較し,高齢者の低下した発汗能が中枢性and/or末梢性のいずれに起因するか検討した。暴露前半では高齢者が前額・胸・背・前腕・大腿のいずれの部位でも緩慢なmsw反応を,後半では大腿においてのみ高齢者が有意に低いmswを,それぞれ示した。fsw vsTbには有意な年齢群差がみられず,大腿においてのみmsw vs fswの傾きが有意に高齢者で小さかった。これら結果は,高齢者の緩慢な発汗反応は,中枢の活動性低下のためではなく,たぶん皮膚温度感受性の低下に起因することを示唆する。また,後半でみられた大腿mswの低下は,汗腺それ自体の萎縮やコリン感受性の低下に起因するものと考えられた。(3)運動強度の増大に伴う発汗・皮膚血流反応の身体部位差の変化に老化の影響がみられるか否か明らかにするために,9名の若年成人と6名の高齢者に対し,28℃環境下で最大酸素摂取量の35,50,65%に相当する自転車運動を日を変えて30分間負荷した。その結果,運動強度の増大に伴う発汗・皮膚血管拡張の変化にみられた部位差に老化が影響することが示唆された。
|