研究概要 |
(1)広範囲の皮膚面の血流量を計測できるレーザードップラー式画像化装置を用い,暑熱下(30℃環境下で60分間の下肢温浴)における8名の高齢者と15名の若年成人の皮膚血流量を胸と大腿の両部立(6.25cm^2)で比較検討した。暑熱下における皮膚血流量は,胸部では有意な年齢群差がみられなかったが,大腿部では高齢者が有意な低値を示した。そのため,老化に伴う皮膚血管拡張能の低下は全身同等ではなく,大腿部の老化が胸部より先行することが強く示唆された。(2)熱放散反応の性差を明らかにするため,健康な10名の若年成人女性(高温期と低温期に下肢温浴テストを実施した)と6名の若年成人男性に対し,30℃環境下で60分間の下肢温浴を要求した。その結果,男性に比し女性は発汗よりも皮膚血管拡張に依存した熱放散特性を有し,その傾向は特に大腿で顕著だった。女性の大腿で観察された皮膚血流量の大きな増加は,皮膚血管拡張感受性の亢進に,大腿を除く全部位で観察された女性の低い発汗量は,発汗中枢活動のためではなく,汗腺の大きさand/orその感受性を含む未梢機構の性差に,それぞれ起因したした。(3)発育・老化が寒冷血管拡張反応に影響するのか否か明らかにするため,12名の思春期前男児と8名の高齢者男性における手中指氷水浸漬時の皮膚温反応を15名の若年成人男性の反応と比較検討した。その結果,思春期前児童と高齢者の寒冷血管拡張反応は若年成人より劣ることが示唆された。(4)寒冷反応の老化特性を精査するため,8年間にわたる寒冷反応の経年的変化を6名の高齢者について検討した。その結果,老化は皮膚血管収縮能を低下し,その代償として熱産生量か亢進するものの,深部体温保持能の低下を招来することが示唆された。
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