成人および高齢者が健康的に生活することのできる社会への積極的取り組みは、重要な課題として提起され、運動の日常生活における習慣化が推奨されている。しかし、成人および高齢者を対象とした場合、一般的な運動強度の指標や体力測定の値だけで評価を提示できないのが運動処方に関する問題点でもある。その原因の一つとして、処方を受ける成人および高齢者が本来保持してきた生活のパターンや、運動刺激に対する生理的変動パターン(リズム)を考慮されていないことが考えられる。成人および高齢者の生体のもつ生理的変動パターンを把握し、より有効な運動の処方が展開できるための基礎資料を得ることを目的として、日常における小学生および成人、高齢者を対象として24時間の心拍数の連続測定を実施した。高齢者の日常生活を反映する条件として、比較的通常行われている生活を持続している日を対象として測定した。小学生の1日の積算心拍数は多い日と少ない日を繰り返す傾向にあったが、成人および高齢者の1日の積算心拍数は、一定の傾向を示さなかった。成人および高齢者とも1日の積算心拍数に小学生との間に差を認めることはできなかった。覚醒時と睡眠時の心拍数の差が小さいことが成人や高齢者の特徴と考えられる。小学生と比較した場合、覚醒時間と睡眠時間の比率に高齢者と小学生の差が認められる傾向にあった。すなわち、成人および高齢者においては、1日の積算心拍数は小学生との間に差は認められなかったが、比較的睡眠時間が短いことが全体的な心拍数に差を認めない結果を示したものと考えられる。小学生を対象とした場合、強制的な運動負荷日の翌日は運動を抑制する傾向を示し、強制的な運動抑制日の翌日は積極的に運動を増加する傾向を示した。しかし、成人および高齢者を運動刺激によって変動を試みた場合、生体のリズムが小学生のように単純に変化するのではないことが示された。
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