東北地方の工業化の特質と現況を、主に工業統計表、国勢調査報告、事業所統計調査報告に基づいて把握した。以下、検討結果の要点を列記する。 (1) 東北地方は1960年代以降全国に占める工業集積量の比率を順調に上昇させてきた。それは主に京浜地域からの電気機械器具および繊維関係の進出工場の集積によるものであった。しかし、東北地方の工業は資本装備率が低く、したがって生産性は全国において最低の水準にあるなど、現在なお低賃金労働力利用の特徴は解消されていない。 (2) 東北地方では1991〜1996年に103千人もの工業従業者の減少が起こったが、減少数の約90%が女子従業者の減少であった。その大半が、電気機械器具工業および繊維関係工業の「技能工・生産工程作業者」であった。そのため、上記2業種が地域の工業構成において大きな比率を占めていたところでは、90年代の工業従業者の減少率が大きかった。 (3) 一方、男子の「専門的・技術的職業従事者」は工業従業者全体の大幅な減少にもかかわらず増加した。この点は東北地方に進出した工場には単なる量産工場だけでなく、開発機能を持った工場が少なくないことを示唆する。また、地域的差異も存在する。岩手県中央部の市町村および仙台北部工業団地が立地する宮城県黒川郡などでは1990年代においても工業従業者数を増加させた。
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