東北地方の工業化と人口の定着に関する分析を行い、下記の結果を得た。 1)1991年以降の東北地方における工業従業者の減少の大部分が女子従業者の減少によるものであった。しかも、1995年現在45〜59才女子従業者の減少が最も大きく、1990〜95年における女子従業者の全減少数(509千人)の61%を占めた。これは中高年女子従業者を抱える資本装備率の低い労働集約的な下請け工場の閉鎖および縮小を反映したものとみてよい。したがって、当該事業所の縮小が、結果として東北地方の工業の一人当たり付加価値額を高めた。一方、東北地方の製造従業者のうち専門的・技術的職業従業者は1990-95年にあっても増加を示し、その増加率(12%)は全国の同比率(5%)を上回っていた。 2)住民基本台帳に基づく人口移動統計によると、岩手県が1993年以降1999年まで神奈川県との間で連続して転入超過を続けていることがわかった。かつてなかった現象である。しかも、その転入超過の大部分が北上周辺地域で起こっていることが確認された。当地域は京浜地域からの異業種の工場進出により、新しい機械加工センターとして近年注目される地域である。ちなみに、北上市における1993〜98年の神奈川県からの転入超過数は685人であった。事業所統計調査報告の統計によると、岩手県に立地する神奈川県本社の工場従業者数は、1991-96年間にあっても772人の増加を示す。この間、神奈川県では、製造業従業者は15%減少したことを考え併せると、東北地方への生産機能のシフトは継続しているとみてよい。
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