1992年に決定されたEU共通農業政策の改革は、30年余におよぶ共通農業政策(CAP)の歴史において、分水嶺とも称すべき画期的な大改革であった。COP作物に対する15-20%の減反政策は、従来の地域農業システムに大きな変化をもたらした。改革が実施に移されてから、すでに7年が経過しており、インパクトの地域的な特徴がしだいに明確になってきている。本研究では、1992年改革がもたらした影響の地域差を、フランス農業に関する地域統計データの検討を通じて明らかにした。改革の主要なターゲットとされた穀物・油糧種子・飼料用マメ類についていうと、まず穀物に関しては、個々の作目が次第に地域的集中度を高めつつある傾向が指摘できた。すなわち、軟質小麦生産地域、硬質小麦生産地域、トウモロコシ生産地域などといった地域的な特性が、近年さらに明確化しつつある。これは、休耕制度の導入と作付け面積の制限という条件のもとで、各地域が比較優位性をもつ作物に生産を集中させた結果といえる。同様の傾向は、油糧種子についても見ることができた。すなわち、パリ盆地の諸地域は、ナタネ生産地域という性格が強まりつつある。これは、従来いちじるしい伸びを示してきたヒマワリ生産が、1992年改革を契機に急速な減少に転じたからである。これに対して、アキテーヌ盆地は、現在もヒマワリ生産地域としての性格を維持している。飼料用マメ類については、明確な傾向が見られなかった。もともと飼料用マメ類は、穀物農業経営において他作物との組み合わせで栽培される作物であり、副次的な役割しかもっていない。それだけに、代償手当のわずかな変動で栽培面積に大きな違いが出やすい作物ということができる。
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