1966年の産炭地域振興法の制定以来、政府・道県庁・自治体や地域住民による地域振興の政策がいかに実施され達成されたか、全国の産炭地域市町村の35年間の成果を検証した。 産炭地域指定市町村について、国勢調査・工業統計調査などの地域資料の収集と分析、「地域振興についての自治体の自己評価」を尋ねる郵送式アンケート調査によって、炭鉱稼働時から現在までの「人口の回復状況」「自治体の財政力状況」「企業誘致の状況」「住民の社会経済的状況」「地域振興の総合的評価」を、「6条地域」「2・10条地域」「旧産炭地域」や「その他の町村」と相互に比較して把握した。その結果、「2・10条地域」「旧産炭地域」では、「閉山から長期間がたち、立地条件も恵まれて再活性化が順調にいっている」ため、疲弊がほとんど解消されていた。しかし「6条地域」のうち、企業誘致・基盤整備では一定の成果があげられてはいるが、「閉山から長期間がたつものの、立地条件に恵まれず依然として大きな問題を抱えている自治体」や、「1980年代後半の「なだれ閉山」の影響を受け、再活性化が進まない自治体」が存在し、大きく2極分化していることが判明した。 また特に問題を抱える地域について、国・道・県・自治体の機関、および当該地域への進出企業経営者に対する聞き取り調査を行った。そして、産炭地域行政にあっては国の機関:「特別な支援をする時代は終わった」、地方の機関:「特別な支援は必要」というジレンマ、雇用創出にあっては行政当局・住民側:「良い仕事がない」、進出企業経営者側:「良い働き手がいない」というジレンマが生じていることが明らかとなった。 最後に、1986年に閉山した長崎県三菱高島炭鉱のケースを事例に、職員-鉱員-組夫という炭鉱労働者三階層グループごとに、炭鉱の閉山が彼らにどのような影響を与えどのように閉山を克服していったかを、明らかにした。
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