本年度は、主として農産物の集荷システムの変貌に関する資料の収集とその基本的な分析を行った。全国的な農産物の生産統計や流通統計の入手に努めた他、特に、事例地域としての江蘇省・河南省・四川省については、集荷システムの実際が判明するように、地方誌(市県誌)等の入手に努めた。収集された資料は、研究補助者の援助を得て整理・分析した。幸いなことに、科研費基盤研究(A)(2)(旧国際学術研究)によって、四川省成都市域において自由市場の現地調査を行うことが出来たので、その際、農産物の集荷システムについても、観察・聞き取りを行うことができた。現在研究は進行中であるが、中間報告として述べると以下の通りである。 計画経済期(1949-1978)には、農産物の生産割り当て制が行われ、その流通に関しても統制下にあった。野菜生産については、大都市の市域の中に野菜生産基地が設けられ、市域内での基本的な自給と計画的流通が行われ、国営商業機構がこれらの流通を担い、国営商店で小売りされていた。市場経済の時期(1979-現在)になると、農産物の生産と流通は次第に自由化され、特に野菜の生産と流通は現在では完全に自由化されている。その結果、農村部には出荷市場が、都市部には集荷市場と小売市場(これらは一括して、集市あるいは自由市場と呼ばれる)が興隆した。これらの自由市場で流通を担っているのは、生産者農民、各種の卸売商人、及び小売商人である。しかしながら、都市部の集荷市場は、未だ近代化されたものとは言い難く、大都市においても、我が国の中央卸売市場に相当する市場が存在せず、数個の設備の整わぬ卸売市場が併存し、売り手と買い手の相対(あいたい)取引が一般であり、取引時間には混雑を極めている。ただし、野菜の集荷は確実に広域化しており、遠距離の流通を担う商人や輸送業者の活躍が見られる。 これらの研究成果の一部は、人文地理学会特別例会(1999年6月)、及び日本地理学会春季大会(2000年3月)において、発表した。
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