文安2(1445)年「兵庫北関入船納帳」は、同年に兵庫北関へ入関した船から関料を徴収するための帳簿で、のべ約1950艘毎にa.入船月日、b.船の所属地、c.貨物の物品名とその数量、d.船頭名などのデータが記載されている。本研究の究極的な目的は、求心化されない流通の存在にも留意しながら、このデータを分析することによって、瀬戸内沿岸地域に見られる畿内中心の地域構造を考察することである。 上述の目的に向け、第3年度である本年は、交付申請書で掲げた研究計画に対し、次の成果を得た。 1.船の所属地(船籍地)について、備前・備中・備後国に属する23ヶ所を主たる対象として選定し、讃岐国の15ヶ所と対比しながら考察した。各地で生産された塩を運ぶ船が多く、塩と他の物品を組み合わせた例がほとんどである。船籍地毎に集計すると、例えば、備後国に属する5ヶ所は、いずれも「備後」と登録された塩を運んでいる。塩を全く運ばないのは、備前5ヶ所、備中1ヶ所、讃岐2ヶ所の計8ヶ所に過ぎない。また、現地を実際に訪れての調査は、備前牛窓などの船に積載された材木を進上した者の居住地として現れる美作北賀茂を含め、船籍地としての讃岐観音寺やさらに遠方の数ヶ所で施した。地図史料や文献の収集も行った。 2.データベースの構築は、来年度も引き続き行う。 3.物品の類型については、物品を運ぶ船の所属国毎にまとめてから行う方法を、既に試行的に提示し、備前牛窓に属した各船毎の物品の組合せで見ても、その分類が有効であると昨年度に確認した。上述の23ヶ所の船でも追認できたので、その有効性は高いと思われる。 4.納帳では合算値のみが見える関料に関しても分析を進め、物品毎の積算基準について、ある程度の見通しを得ることができた。
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