最終年度の本年度は、交付申請書に記載した以下の項目について研究を進め、研究成果報告書を作成した。 1.昨年度に主たるフィールドとしたのは備前・備中・備後国であった。讃岐国と比較しながら、それらの国に属する船籍地とその船に関する検討を深化させた。そして、備前国犬嶋、讃岐国嶋・野原などの船に対して徴収された関銭についての成果は、秋に口頭発表で公表した。さらに論点を深め、研究成果報告書に集約できた。 2.納帳における記載項目のうちcの物品を類型化するのに、二つの基準による方法を既に提示した。第一は、物品が積載された船をbの船籍地別に集計することによる、物品種毎の船籍地の分布パターンからの類型化である。第二は、集計値をその船籍地の所属国毎にまとめあげることによる類型化である。両者を比較して、各々の有効性を検討した。すなわち後者が、物品が生産されたり集荷・出荷された地の大まかな推定に役立つのに対し、前者の分布パターンそのものは、さらにミクロな考察に資する。 3.本研究を行う以前の業績として、船頭に関する一般論と阿波国に属する船についての特論が挙げられる。本研究による成果も踏まえ、論点をさらに深め、納帳から再構成できる全体の中に位置づけた。後者については土佐国と比較した。 4.主な史料とする納帳について、データベースの構築を完成させ、史料に基づいた検討の効率化をはかった。 5.地図・文献等の収集を中心とした現地調査も、併せて進めた。具体的には、安芸・伊予・土佐・筑前国を調査対象とした。
|