本研究の目的は、過疎地域を「縁辺地域」として位置づけなおし、地域実態調査を通してその基本性格を整理し、縁辺地域空間の形成・変動の理論的追究を行うことである.今年度の研究では以下の調査・分析・学界活動を行った. 1. 調査:福岡県旧産炭地域(筑豊・大牟田)、島根県山村地域(石見地方)をはじめとする縁辺地域調査を行った.また、北部九州や他の西日本地域の過疎化などに関する資料収集のために九州大学他へ資料収集旅行をした. 2. 分析:本研究に関連して購入したパーソナル=コンピュータ類や文具を用いて過疎地域に関するデータ分析を開始した.具体的には、炭鉱閉山に伴う人口移動者のデータベース構築などを行い、多変量解析の準備を整えた.また、購入した文献を分析や調査の参考とした. 3. 学界活動:1999年3月に韓国で開催された第1回 East Asian Regional Conference in alternative Geographyに参加し、“Industrialization and Spatial Integration japan"というタイトルで研究発表をした.また、過疎地域に関する研究会を立ち上げ、活動を開始したところである. 以上の諸活動を通じて、グローバル/ナショナル/リージョナル/ローカルな諸スケール/レベルでの経済活勤、政策、社会・文化現象、そして人間〈エージェント〉などの錆綜する構造における縁辺地域空間の形成と変動の図式をまとめる作業に入った.また、産炭地域や山村などの現実の過疎地域の実態調査を通じて、現状の地域問題の解決のみならず、将来的な地域振興のあり方の指針を追究するような枠組みの構築に取りかかっている.これらの業績を逼じて、最終年度〈平成11年度〉に成果をまとめることとする.
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