本研究では、山村・旧産炭地域・離島などの過疎地域を「縁辺地域」として位置づけなおし、実態調査を通じて地域の基本性格を抽出しつつ、地域空間の形成と変動に関する一般理論・空間理論の追究を行い、実証分析と理論追究の二面からわが国の縁辺地域の形成・変動を分析しながら、他の先進国における事例との比較研究へとつなげていくことを企図した。本研究期間中には複数箇所での調査・資料収集を行い、伝統的環境利用や人口移動・地域機能の衰退などについて調査し、これら調査地域自治体・コミュティのほかに図書館・大学などにおいて資料収集を行った。初年度の平成10年度には、従前からの縁辺地域実態調査の分析を継続し、西日本をフィールドとして山村・旧産炭地域・離島などの調査を行った。また、翌年度に予定されていたスウェーデンの研究者たちと共同で行う農山村などのsustainabilityに関する研究に備えた。二年度目の平成11年度には、補足・追加調査を行うとともに、国際集会(1999年5月11日〜13日に鳥取大学で開催された国際シンポジウム"Local Knowledge and Innovation:Enhancing the Substance of Non-Metropolitan Regions"における口頭発表・座長・オーガナイザー)をはじめとする複数の場で研究成果の発表を行い、また、本報告書の作成作業を行った。おおかたの過疎地域において人口流出そのものは鈍化してきたものの、高齢化や産業衰退など、地域の経済活力の衰退に直接的につながる困難な状況があり、過疎法や山村・離島・半島などに対する種々の振興法がまもなく効力の失効する期限を迎える中、また経済の低成長・地方分権化の雰囲気の高まりの中で、地域機能の衰退を含む様々な問題が山積し解決に向けての努力が一層必要となっている状況であることが明白となった。
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