研究概要 |
本研究は,中山間地域の問題を地方中小都市圏の存立構造と関連づけて検討するものであるが,とりわけ都市システムや経済構造の変動を中心に解明することに力点を置いている。本年は初年度であり,主に中国山地の2つの盆地地域,中でも広島県三次市とその周辺地域を対象として経済基盤を中心とした実態調査を行うとともに,統計資料や官庁資料の閲覧収集のための出張を行った。これまでに明らかとなったのは以下の点である。1)1990年頃を境に,中国地方内陸部に進出していた労働力志向型の工業は,国際競争の激化やバブル経済崩壊による不況によって,仕事量の絶対的な減少に直面している。また同じく経済的に重要な意味をもっていた建設業も景気の後退,公共投資の見直しの中で縮小を余儀なくされている。2)こういった地域の雇用の柱であった雇用の減少の中でサービス業は着実に成長しており,地域労働市場の質的変化が生じていると考えられる。3)しかし,こうしたサービス業は大都市の成長基盤となっている対事業所サービスではなく,医療,福祉,教育といった公共サービスが中心であり,それゆえこのような領域においては中小都市と周辺の中山間町村が既に広域連携が進んでいるか,また今後積極的に進めるべき状況にあると考えられる。特に高齢者福祉サービスにおいては介護保険制度の実施が間近に迫っていることから,こうした地域での考察の意義が大きいことが明らかとなった。
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