研究概要 |
本研究は,中山間地域の問題を地方中小都市圏の存立構造と関連づけて検討するものであるが,とりわけ都市システムや経済構造の変動を中心に解明することに力点を置いている。本年は最終年の3年目であり,これまで収集した統計資料をもとに広島県の中山間地域や,広島県三次市・庄原市とその周辺地域(備北地域)をとりあげ,インテンシブな調査を進めた。その上で,最終年度としての研究の取りまとめを行った。これまでの成果は以下の通りである。 岡橋は,中山間地域研究の動向を整理検討し,地方中小都市との関連で中山間地域を捉えることの意義を明らかにした。また,広島市に近接する山村地域を事例に,その経済的な変化を考察し,広島市の影響力増大の一方で,都市圏レベルの政策的協力関係があまり進んでいないことを指摘した。加藤は,サービス経済化が東京圏と国土周縁部でともに進んでいるが,両者間に主導部門が事業所サービスと公共サービスという違いがあること,また三次市での実態調査にもとづき,地方都市のサービス業が公的部門に依存していることを明らかにした。友澤は,広島県庄原地区を事例として就業構造と工業の動向を検討し,就業者数の減少,労働供給力の減退,工場の閉鎖や撤退による工業従業者の減少,工業内部における業種間の雇用動向の差,派遣労働者や外国人労働者という新たな労働力の導入などを指摘した。浅野は中山間地域はもちろん地方中小都市圏にとって経済的に重要な公共事業の実態について分析し,地方の中央への依存構造を克服することの必要性を,最近の政策動向と関連づけて提起した。
|